使い捨てリチウム電池(一次電池)とは?

リチウム電池.COMに寄せられるお客様からの質問で多いのが「こちらのサイトで売っている電池は充電できますか?」というもの。答えは「すべて一次電池のため、充電できません」なのですが、たしかにリチウムイオン電池(スマートフォンなどで使用される充電可能な電池)と名前が似ているし、日常生活では一次電池という言葉自体あまり馴染みがありません。そこで今回は、使い捨てリチウム電池(一次電池)について詳しく解説します。

一次電池と二次電池の違い

日常生活のなかで一次電池や二次電池という名称はあまり耳にしないですが、電池を分類する言葉として一次電池、二次電池という呼び方があります。
一次電池、二次電池はいずれも化学電池の一種で、1回放電して使い切る(使い捨ての)電池を一次電池(乾電池など)、充電して繰り返し使える電池を二次電池(蓄電池)と呼びます。
化学電池とは物質の化学反応によって電気を得る電池のことで、活物質という異なる種類の金属と電解液を組み合わせ、効率的に化学反応を起こしていきます。活物質と電解液の組み合わせ方によって、性質の違うさまざまな電池を作ることができるのです。

 

 参考:京極一樹『しくみ図解シリーズ 電池が一番わかる』(技術評論社、2010年)

 

では、そもそもなぜ「一次」や「二次」と呼ぶようになったのでしょうか。

 

それは、最初に充電池が登場したときの充電方法に由来しています。
当初は充電池に電気を供給するための発電機は開発されておらず、使い切りタイプの電池(一次電池)が電気を供給していました。
そこで、最初に電気を作って供給するという意味で、使い切りタイプの電池を一次電池と呼び、一次電池から電気を供給してもらう立場の蓄電池を二次電池と呼ぶようになったのです。

 

 参考:三洋電機株式会社『よくわかる電池』(日本実業出版社、2006年)

 

最近では電気を繰り返し充電して使うことができる二次電池の性能が飛躍的に高まってきたことから、二次電池を使う機会が増えています。しかし、懐中電灯やリモコン、パソコンのマウスなどのように、電池切れのときにすぐに入れ替えて使用する必要があるものだと、交換すれば即座に使うことができる一次電池のほうが便利な場合があります。
また、充電できない環境下でも電池が必要な状況があります。たとえばリチウム電池.COMでも販売している「屋外用電源BOX」は、設置場所や天候などの都合で充電できない環境下でも独立電源として機能させるために、一次電池(大容量塩化チオニルリチウム電池)を採用しています。
他にも、タディラン社製のリチウム一次電池「TL-5930/S」などは、電源を引っ張ってこられない無線ガス検知器や無線通信モジュール、無線振動センサの電池に使用されています。

 

リチウム一次電池とは?

電池は基本的にプラス極、マイナス極、電解液の3つから構成され、マイナス極の物質にリチウム(Li)が使われている電池をリチウム電池と呼びます。
リチウム電池のなかでも金属リチウムを使ったものをリチウム一次電池と言います。
一方、よく似た名称でリチウムイオン電池があります。これは金属ではなくリチウムイオンが用いられており、スマートフォンやノートパソコンによく使われる二次電池で、リチウム一次電池とは別物です。

 

参考:京極一樹『しくみ図解シリーズ 電池が一番わかる』(技術評論社、2010年)

 

リチウム一次電池の歴史

それでは、リチウム一次電池はいったいどのようにして誕生したのでしょうか?

 その歴史は1950年代にアメリカ(NASA)で宇宙用・軍事用として開発されたのが始まりです。太陽電池が開発される前は人工衛星やロケットにリチウム一次電池が使われていました。

リチウム一次電池は長期間でも機器の中に入れたまま利用できるため、現在ではガスメーター、水道メーター、火災報知器、パソコンなどの電源に重宝されています。
日本では1975年から1985年の10年間、リチウム一次電池の開発がさかんでした。

1975年:松下電池工業がフッ化黒鉛リチウム電池を商品化
1978年:三洋電機が二酸化マンガンリチウム電池を商品化
1983年:日立マクセルが塩化チオニルリチウム電池の生産開始
1985年:松下電池工業が酸化銅リチウム電池を開発(現在は生産中止)

出典:京極一樹『しくみ図解シリーズ 電池が一番わかる』(技術評論社、2010年)

 

リチウム一次電池の特徴

「リチウム」は、1817年にスウェーデンの科学者アルフェドソンが発見した金属です。ナイフで切れるほど柔らかく、比重は0.53と水の半分ほどしかありません。そのため、小型軽量化が求められる電池に使う材料として適していました。
リチウム電池は自己放電※が少ないという特徴があり、長期保存・長期使用に適しています。たとえば二次電池のニッケル水素電池は1ヶ月間で約10%自己放電しますが、リチウム電池の場合には1年間に1%程度しか自己放電しません。
こうした軽量化や自己放電の少なさのほかに、3~4Vという非常に高い電圧を発生できる点もメリットです。単純に考えれば、リチウム電池1本で通常の電池2~3本分の電圧をまかなうことができるため、今までの電池スペースを削減することが可能となります。
また
動作温度範囲が-50℃〜+80℃と幅広く、過酷な使用環境にも対応できます。

※自己放電・・・使用しない状態でも電池の中で化学反応が起こり、電気が減っていくこと

 

コラム①一次電池の充電は危険

一次電池は充電して使用することはできませんが、仮に一次電池に充電した場合、破裂や液漏れが起こる危険性があります。液漏れで漏れ出す電解液は有害です。とくにアルカリ乾電池が破裂して電解液が皮膚に付着すると火傷を起こし、目に入ると失明する危険があります。
円筒形のニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの充電できる二次電池と形状がよく似ている場合がありますが、一次電池は充電できないため注意が必要です。



リチウム一次電池の種類

先ほど「マイナス極の物質にリチウム(Li)が使われている電池をリチウム電池と呼ぶ」と述べましたが、プラス極活物質にどのような物質を使うかによって、さまざまな種類の電池にわけることができます。

 

二酸化マンガンリチウム電池

二酸化マンガンリチウム電池はプラス極に二酸化マンガンが使われています。
リチウム一次電池のなかで生産量が多く、リチウム電池の中心になっているのが二酸化マンガンリチウム電池です。公称電圧※が3.0Vで、高容量で瞬間的な大電力も供給できるなど、非常に高性能な一次電池です。瞬時に大電力を必要とする場合に用いられます。

公称電圧・・・電池を通常の状態で使用した場合の電圧の目安

CR17335SE-T1

【FDK】 筒型タイプ CR17335SE-T1 [日本]

 

塩化チオニルリチウム電池

塩化チオニルリチウム電池はプラス極に塩化チオニルが使われています。
リチウム電池の中では最も電圧の高い電池で、公称電圧は3.6Vです。二酸化マンガンリチウム電池(3V)より20%も高く、マンガン乾電池やアルカリ乾電池(1.5V)の2倍以上の電圧を発生させることができます。

低温や高温環境下といった広い温度範囲での使用に強いという特徴もあります。塩化チオニル自体の融点が-104.5℃と非常に低く、低温でも安定した電圧を維持できます。
また自己放電が従来の電池に比べてかなり小さく、放電・貯蔵による電圧低下がほとんどないという特徴をもつため、精密電子機器の駆動用電源として最適です。長期にわたってメンテナンスフリーが求められる電子機器、たとえばメモリICのバックアップ用、防犯・警報装置用、電力・ガス・水道メーター用の電源として採用されています。

TL-5930/S

【TADIRAN】 筒型タイプ TL-5930/S [イスラエル]

LS14250
【SAFT】 筒型タイプ LS14250 [フランス]

 

ヨウ素リチウム電池

ヨウ素リチウム電池はプラス極にヨウ素とポリビニルピリジンの混合物が使われています。
ペースメーカーなど長期において高い信頼性が要求される医療機器に採用されています。
円筒形とコイン形があり、放電末期まで一定の電圧を保ち、使用温度は-55℃から+85℃までと幅広いです。

【Electrochem グレートバッチ社】 筒型タイプ BCX85-3B64-TC [USA]

BCX85-3B6050
【Electrochem グレートバッチ社・価格問い合わせ】 コインタイプ BCX85-3B6050 [USA]

 

参考:京極一樹『しくみ図解シリーズ 電池が一番わかる』(技術評論社、2010年)

 

コラム②一次電池のトラブルの原因は?

現在でも一次電池のトラブルの約9割が液漏れという報告※があります。

一般社団法人電池工業会『どんなトラブルが多いのですか?』

一次電池のなかでもアルカリ乾電池が液漏れを起こしやすいと言います。漏れ出す液体が有害なことから、アルカリ乾電池は鉄製の容器による完全密封構造になっているため、通常の使用方法では液漏れは生じないはずです。しかし、以下のような誤った使用法により、電池内部の水素ガス発生や発熱で、破裂する危険があります。

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【一次電池の誤った使用法】
・長時間使わずにそのまま機器に装着して放電(過放電)
・古い電池と新しい電池を一緒に使用(過放電)
・プラス極とマイナス極を逆にセットして接続(逆装填)
・銘柄(会社名、ブランド名)や種類の違う電池、サイズの違う電池を混ぜて使用

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アルカリ乾電池は電池の内圧が上昇したときに水素ガスを外に逃がすため、ガスケットの一部が裂けて穴が開くように設けられています。この水素ガスが排出されるときに電解液も一緒に漏れ出してしまいます。一次電池、とくにアルカリ乾電池を使用する際は正しい使用法を守ることが大切です。

データ出典:一般社団法人電池工業会『どんなトラブルが多いのですか?』



まとめ

「使い捨てリチウム電池(一次電池)とは何か?」について、
・一次電池と二次電池の違い
・リチウム一次電池の歴史
・リチウム一次電池の特徴
・リチウム一次電池の種類
 というポイントから解説しました。

 

使い捨てリチウム電池(一次電池)とは、
・1回放電して使い切る(使い捨て)タイプの、充電不可の電池
・マイナス極の物質にリチウム(Li)が使われている電池
・自己放電が少なく、高電圧、動作温度範囲が広いという特徴をもち、精密機器などさまざまな用途で使われている電池 だと言えるでしょう。

 

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参考文献

三洋電機株式会社『よくわかる電池』(日本実業出版社、2006年)
京極一樹『しくみ図解シリーズ 電池が一番わかる』(技術評論社、2010年)
中村のぶ子『図解まるわかり 電池のしくみ』(翔泳社、2023年)

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